技術コラム

連載:メタバースと製造現場 
第2回「ビジネスシーンにおけるメタバース」

メタバースによる製造業のデジタル化・自動化ロボティクス・脱炭素の推進に向けて

製造業のデジタル化・自動化ロボティクス・脱炭素に向けた強力なツールとして、メタバースの活用が始まっています。本コラムでは3回連載で、製造現場とメタバースの相性や期待できることなどを見てまいります。


第1回 「メタバースの活動空間」をお読みいただきありがとうございました。第2回では、デジタルツインの特長を活かした事例を中心に、メタバースを見てまいります。

ビジネスシーンとも相性の良いメタバース

コロナ禍におけるオンラインコミュニケーションの急速な定着に後押しされ、仮想空間の有用性は高まり、メタバースの世界市場は2030年には78兆8,705億円にもなると予想されています。(※1)

一定の距離を保ちながら多くの人々が集い、実際の現場では準備や表現がしにくい物事や状況を再現できるという仮想空間の強みは、メディアやゲーム、エンターテインメントの世界だけではなく、ビジネスシーンにも進出しています。

2020年以降、順次発表された内閣府によるムーンショットでは、目標1において 「空間と時間の制約を超えて、企業と労働者をつなぐ新しい産業を創出する」 などが掲げられました。(※2)

日本では一部の企業が住宅のモデルルームやホテルの客室、新車などを再現し、購入前のお試しや情報収集のツールとして、メタバースサービスをはじめました。コミュニケーション・体験・シミュレーション・デジタルアーカイブなど多様なビジネスシーンで活用され、今後も拡大を続けるでしょう 。

デジタルツインの特長を活かした事例

複数の離れた場所にいる人々の共同作業は 【2D】 から、デジタルツインによって現場とデジタルが補強し合う 【立体的な仮想空間-3D】 に進展しています。デジタルツインの特長を活かした実証実験や活用事例として、今回は身近なものをご紹介します。

① デジタルツインで構築した街で水害を再現し浸水被害をシミュレーション
3D化した浸⽔想定マップ上に 「垂直避難」 が可能な建物をピックアップします。これによりハザードマップでは補いきれない、建物の高さや地上階数・構造なども盛り込んだ 「3D防災マップ」 が作成できました。

② デジタルツインで再現した街に掲出する屋外広告の効果シミュレーション
3Dで実際の街を再現し人流のデータを組み合わせて空間解析を行い、掲出する広告を配置します。広告の視認性に、人流・世代・流行などを掛け合わせた広告効果のシミュレーションや測定ができました。

③ デジタルツインで再現した建設現場とIoT の組み合わせ
建設現場を再現した3Dシステム上に、資機材や稼働データなどを配置します。さらに実際の現場からは、IoT (作業者行動センシング)により作業員の動きがリアルタイム送信され、3Dシステム上に取り込まれます。この2つのDXを組み合わせて、工事管理者や関係者が遠隔地からでも的確かつ安全に状況を確認することを可能にしました。

複雑で危険をも伴う現場はデジタルツインと非常に相性が良く、今後の展開に期待する声も多く寄せられています。

次回は 「製造現場におけるメタバースの活用」 として、活用事例を具体的に見てまいります。(ぜひ第3回もご覧ください)

注釈

※1 総務省 令和4年 情報通信に関する現状報告の概要 第2部-第6節 国内外におけるサービス・アプリケーションの動向 10.仮想空間市場など https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd236a00.html
※2 内閣府の政策 科学技術・イノベーション ムーンショット型研究開発制度 ムーンショット目標1 https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/sub1.html

第3回「製造現場におけるメタバースの活用」

2月8日掲載の第3回では、製造現場におけるメタバースの活用について、具体的に見てまいります。

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