技術コラム

プラスチック油化開始に向けたケミカルリサイクル設備

ENEOS株式会社・三菱ケミカル株式会社

当社は三菱ケミカルグループのエンジニアリング会社として、このケミカルリサイクル設備の基本計画からプロジェクトに参画。ENEOS・三菱ケミカル・国内外のベンダー各社と協業し、超臨界水熱分解技術を実プラントへ実装するための高度な技術的課題を一つ一つ解決しながら、この革新的技術に基づく設備の日本初の建設に大きな役割を果たしました。技術的な課題は、設計 - 製作 - 施工 - 検査 - 試運転の全域で発生しましたが、今回は本設備の超臨界水加熱器で当社が実施した課題解決の一例を紹介します。

超臨界水熱分解技術で使用済みプラスチックを分解~油化

本設備は、外部から調達した使用済みプラスチックを英国の Mura Technology 社の超臨界水熱分解技術※により化学的に分解する ”油化処理” を行います。ここで製造されたリサイクル生成油は、既存設備の石油精製装置およびナフサクラッカーの原料として使用でき、石油製品や各種化学品・プラスチックに再製品化されることで、サーキュラーエコノミーを実現します。
※ 超臨界状態(高温・高圧)の水を溶媒としてプラスチックを分解する技術。分解しながらプラスチックが水に溶解し、この水が生成油の再結合を抑制することでリサイクル生成油が製造されます。

超臨界水加熱器の課題解決

1)機器の性能

超臨界水生成は将来的に再生可能エネルギーを使用できるよう、この規模としては世界初となる電気による加熱方式を採用しました。しかし臨界点付近で比重・比熱・熱伝導率が大きく変化するため熱伝達特性が不安定になり、局部加熱による性能低下の恐れがありました。そこで詳細な熱流動解析を行い、加熱する機器内で流動の滞留が発生しないような形状で機器を設計しました。


2)機器の材質・構造

超臨界水を製造する電気加熱器は高温高圧下で稼働するため、国内の厳重なコード(高圧ガスやボイラー等)要求に合格する必要があります。今回は特殊仕様であるため材料、構造、検査方法の全てで個別に特例申請し、合格する必要がありました。そこで使用状況下における機器の健全性を証明する詳細な構造解析に基づき、材料、構造、検査方法に関して適切に選定し、全ての特例申請に合格させました。


3)機器の製作

電気加熱器の主要パーツには非常に精度の高い穿孔加工が必要でした。こちらも国内法コードに合格させるため当社で検討した結果、材料は非常に硬度の高い超合金で厚みも大きな部品になり、通常の加工方法では要求精度の実現は困難であることが判明しました。そこで要求精度を実現できる新たな加工方法を検討開発し、機器全体を完成させました。




2025年7月2日に三菱ケミカル茨城事業所(茨城県神栖市)において、本設備の竣工式が開催されました。

左から 1 人目 石田 進 様 (ご来賓:茨城県神栖市長)、同 2 人目 額賀 福志郎 様 (ご来賓:衆議院議長)、同 3 人目 筑本 学 様(三菱ケミカル株式会社 代表取締役社長)、同 4 人目 山口 敦治 様 (ENEOS 株式会社 代表取締役社長 社長執行役員)、同 5 人目 大井川 和彦 様 (ご来賓:茨城県知事)、同 6 人目 藤井 宏記 (三菱ケミカルエンジニアリング株式会社 代表取締役社長)

三菱ケミカルグループは「革新的なソリューションで、人、社会、そして地球の心地よさが続いていくKAITEKI の実現をリードする」という Purpose のもと、社会課題に最適なソリューションを提供し続け、素材の力でお客様を感動させる「グリーン・スペシャリティ企業」を目指しています。当社は三菱ケミカルグループのエンジニアリング会社として、今後もカーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けて技術力の更なる向上に努めてまいります。

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