技術コラム

ケミカルヒートポンプ:前編

幅広い分野における廃熱回収

当社のケミカルヒートポンプ技術は、化学反応熱による熱再生を利用しています。圧縮式ヒートポンプに比べ、低温熱源からの熱回収と大きな昇温幅を実現しました。

ケミカルヒートポンプとは

化学反応熱を用いて熱再生を可能とする、イソプロパノール / アセトン / 水素系ケミカルヒートポンプ(IAH-CHP)に着目しました。
IAH-CHPでは80℃程度の低温熱源により イソプロパノール(IPA)から脱水素反応(吸熱反応)を進行させます。この時にできるアセトンと水素を使い、逆反応である アセトンの水素化反応(発熱)を進行させると、200℃程度の高温まで昇温させることができます。この仕組みによって、圧縮式ヒートポンプでは困難だった昇温幅および低温熱源からの熱回収を可能にします。

吸熱反応(IPAの脱水素化):(CH3)2CHOH(l)→(CH3)2CO(g)+H2(g) ΔH°=+100 kJ/mol、発熱反応(アセトンの水素化):(CH3)2CO(g)+H2(g)→(CH3)2CHOH(l) ΔH°=-100 kJ/mol、CHPとして知られる反応系:アセトン・水素・イソプロパノール、低温80℃から高温200℃まで、触媒必要

ケミカルヒートポンプの仕組み

A:吸熱反応器
吸熱反応器に80℃程度の低温の熱を与えると、IPAの脱水素反応が進行しアセトンと水素が発生します。転化率は100%ではないため、ここでは未反応のIPAも出口に含まれます。

B:分離器(蒸留塔)
未反応のIPAが発熱反応器に供給されると反応の妨げになるため、IPAとアセトン・水素を分離させる装置が必要です。ここでは蒸留塔を想定しています。分離されたIPAはBTMから吸熱反応器に供給され、アセトン・水素は気体の状態で圧縮機へ送られます。

C:圧縮機
アセトンと水素を圧縮します。

D:熱交換器
発熱反応器の出口流体(高温)と熱交換し、予熱をします。

E:発熱反応器
アセトンの水素化反応により発熱反応器から200℃度の熱が放熱されます。これを熱回収・熱交換して利用します。アセトンの水素化反応も転化率は100%ではないため、出口には生成したIPAだけでなく、未反応のアセトン・水素も含まれます。この出口流体もBの分離器に供給してIPAとアセトン・水素に分離します。

開発の背景

廃熱回収や工程熱供給を目的とする産業用ヒートポンプは、資源エネルギー庁 「第7次エネルギー基本計画」(※注釈1)でも取り上げられ、期待が伺えます。中でも産業用ヒートポンプとして一般的な圧縮式は、電力駆動で再エネとの親和性が高くCO2削減に有利として注目されてきました。
一方で従来の圧縮式ヒートポンプは、回収熱と放熱の温度差が大きい場合、装置が大型になることがあります。また低温熱の回収が難しい面もありました。

当社は、この低温熱・高昇温幅のニーズにお応えできる化学反応を利用したケミカルヒートポンプを、名古屋大学、東京農工大学と共同で検討しています。(注釈2)

注釈

(1)
経済産業省>資源エネルギー庁>政策について> エネルギー政策(全般)> エネルギー基本計画について
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/
第7次エネルギー基本計画(令和7年2月)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20250218_01.pdf

(2)
本技術は特許出願中です

後編:ケミカルヒートポンプの具体的な適用例

7月27日掲載の後編では、ケミカルヒートポンプの具体的な適用事例を紹介いたします。ぜひ後編もお読みください。

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